第44期 棋王戦 第1局 渡辺棋王vs広瀬竜王

棋王戦がついに始まった。現在勝率8割でA級昇級を既に決めている渡辺棋王とレーティング1位の広瀬竜王という屈指の好カードである。

先手番は広瀬竜王で戦形は相掛かりの最新形。開始早々に▲9四歩として8筋の歩を受けずに駒組みを進める．先手は角道を開け、対する後手は角道を閉じたまま浮き飛車に構える。

一方先手は2筋の歩を交換せずに右桂の活用を図る。去年公開された、AlphaZeroの棋譜によく現れている形だ。

その後、23手目に▲2四歩と歩を交換、その後▲2五飛車と構える。後手は△6四歩~△7四歩と銀・桂を活用する構え。

先手は昼食休憩を挟んで、▲8五歩と後手の飛車を追い返してから、▲2四歩。これは6四の歩を狙いに行った手。

後手はその狙いを受けて立ち、▲6四飛に△6三銀とし、▲2四飛△2三歩▲2五飛△3四歩と遂に角道を開ける。

対して，先手は▲7七桂と桂馬を活用していく．角道が止まるようだが，▲9四歩と突いてあるので，端角での活用も見込める．

後手も△5四銀と攻めの銀を前線に繰り出す

▲4六歩△4二銀▲4七銀と相掛かりらしく非常に難解かつ薄い玉形の形勢が続く． 

戦場が6-8筋方面で起きそうなことを見越して，後手は△4一玉，先手は▲4九玉と玉を逃す．

△1四歩と玉側の端歩を上がった手に対し，先手は受けずに▲3八玉と玉を上がる方を選択．

そこで△4四歩と，一旦角道を止めるが，雁木模様の組み替えも見せる．

角道が止まったのを見て，先手は働いていない銀を▲6八銀と活用する．

後手は△4五歩と突いて，▲同歩で先手の飛車のききが止まる．さらに△3三桂〜△1三角と4筋方面を睨む．

対して▲1六歩と受けた手に対し，△8五桂で開戦．

▲8六歩と受けておき，△4六歩と拠点を作った手に対し，▲5六銀と躱して，△7七桂成▲同角．

△6四桂打と後手は攻めの手を継続する．先手は銀取りを手抜いて▲4四桂打とカウンターを狙う．形勢は互角のままで非常に難解．

△4三銀上と銀を上がって受ける．

広瀬竜王はここで時間を使って、▲5五銀△同銀▲同角として、△6三金と桂取りを受けさせてから▲3二桂成△同銀。この時点で持ち時間が先手11分、後手1時間10分と大分差があり、形勢は互角だが先手が辛くなってくる。

▲4三銀打では決め切れないと思ったのか▲4四歩と次の歩成を狙い、出番を渡す。これがどうも良くないらしい。

後手も少し考え△5四歩と角に狙いをつける。終盤戦に差し掛かり、後手が徐々に指しやすくなってきた。

▲4三歩成△5五歩▲4二歩打△5一玉とかわして、▲8三銀打と飛車の横効きを止める。

後手は飛車取りに構わず△4七銀打と決めに行く。

▲同金△同歩成▲同玉に対し、△4六桂打が味の良い手。角が効いているので▲同玉と出来ず上部にも脱出できない。

勝ちが無いと見たのか、ここで先手の投了となった。

途中まで互角な戦いだっただけに、持ち時間の差でやられてしまった印象。

次局も熱戦を期待したい。